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改正民法対応「情報システム・モデル取引・契約書」 by IPA / 経産省

晴耕雨読

以前より、経産省 & IPA にて公開されている モデル取引・契約書が、 民法改正に対応した為、改めて内容を確認。

解説も含めて、200ページ超の内容は、流石に丁寧で分かりやすい。

ポイント - 特に「瑕疵担保責任」→「契約不適合」

詳細は、上記1のIPAページの記載のとおりですが、今回の民法改正で最も気になるのは 「瑕疵担保責任」→「契約不適合」。

内容
改正前 瑕疵担保責任は引渡時/仕事の終了から1年以内に権利を行使する必要あり
改正後 契約不適合を知った時から1年以内にその旨の通知をすればよい。
注文者が契約不適合を「知る」までの間は消滅時効一般に基づき、10年間権利の行使

これに対し、新規モデル契約では、 「責任追及期間が延びれば人員維持コストが上がり、報酬に転嫁される結果、ユーザ企業に不利益」 等の理由で、民法改正前と同様、引渡時/仕事の終了からの期限を設けている。

その他では、以下もポイントになると思います。

  • 要件定義は、ユーザ側主体で行う為、準委任
  • 仮発注書はモデル契約書に用意されているが、やむを得ない場合のみ使用
  • 開発基本モデルの19条(外部設計)は画面,帳票,IFの仕様策定の為、準委任(ユーザ主体)もある

モデル契約書 からの抜粋

モデル契約書として、「開発基本契約」「運用保守基本契約」「運用保守個別契約(サンプル)」が wordファイルで公開されています。

以降では、条文の抜粋と共に、やはりポイントと考えている部分に★を記載しています

ソフトウェア開発委託基本モデル契約書

タイトル 内容
■総則■
1条 契約の目的
2条 用語の定義
3条 適用範囲
4条 個別契約 作業内容や請負/準委任,納期,委託料/支払法は個別契約で定める
5条 委託料、支払方法 個別契約で定める
6条 作業期間、納期 個別契約で定める
7条★ 再委託 ユーザ事前承諾を要する場合と、ベンダ最良の場合あり
■推進体制■
8条 協働と役割分担 「詳細」は個別契約で定める
9条★ 責任者 各個別契約では責任者を選任し、以降○条の権限/責任を有する
10条 主任担当者 責任者の下で連絡確認や調整を行うプロジェクトリーダ
11条★ 業務従事者 ベンダ従業員は、あくまでベンダが指揮命令を行う
12条 連絡協議会の設置
13条★ プロジェクトマネジメント責任 マルチベンダ方式の場合、ユーザ側が責任を負う
■本件業務■
14条★ 要件定義支援 要件定義はユーザ主体で、ベンダは支援(準委任)だが善管注意義務を負う
15条 要件定義支援の個別契約 要件定義支援の範囲は、4条に従い個別契約で決める
16条 要件定義検討会 検討会はユーザ主催だが、必要ならベンダからも開催OK
17条 要件定義書の確定 ユーザ&ベンダの合意で確定.要件定義は準委任の為,修正はユーザ実施
18条 要件定義の終了・確認 要件定義の合意後、ユーザは期間内に点検を行い、確認(検収)する
19条 外部設計の実施 17条の要件定義に基づき、ベンダが行うが、ユーザへ必要な協力要請もOK
20条 外部設計の個別契約締結
21条 外部設計書の納入 ベンダは期日までに外部設計書、書検収依頼書(納品書)を納入
22条 外部設計書の承認・確定 ユーザは期間内に点検を行い、承認(検収)する
23条★ 契約不適合責任 外部設計の確定後、個別契約の目的を達成しない誤り(契約不適合)が
ある場合、追加を求めることができる。
契約不適合におり損害を被った場合、損害賠償請求できる。
ベンダが契約不適合責任を負うのは外部設計承認後、○年以内
24条★ ソフトウェア開発業務の実施 モデル契約書ではシステムテストが準委任型と請負型がある
25条 SW開発の個別契約
26条 納入物の納入
27条 検査仕様書の作成・承認 ユーザはシステム仕様書に基づく検査仕様書を作成しベンダに提出
28条 SWの検収 ユーザは検査仕様書に基づき検査しシステム仕様書とSWの整合を点検する
29条 契約不適合責任
30条★ SW運用準備支援
31条 SW運用準備の個別契約
32条 SW運用準備の終了・確認
■契約内容等の変更■
33条 本契約/個別契約の変更 事前協議の上、書面により変更契約を締結できる
34条 システム仕様書等の変更 変更が必要な場合、変更提案書を相手方に交付/提案し、
定められた変更管理手続によってのみこれを行える
35条 中間資料のユーザ承認
36条 未確定事項の扱い ユーザ&ベンダで合意された未確定事項は、次工程へ持ち越せる
37条 変更管理手続 変更に費用を要する場合、金額も協議する
38条 協議不調で契約終了
■資料/情報の扱い■
39条 資料等の提供/返還
40条 資料等の管理 ベンダはユーザからの資料等を管理/保管し、本件以外には使用不可。
業務遂行上必要な範囲内で複製/改変OK
41条★ 秘密情報の扱い 口頭で秘密の旨通知した情報は、開示後○日以内に書面で内容を特定。
再委託先や退職者へも秘密保持義務を負う。
秘密保持義務は本契約終了後一定期間、存続する
42条 個人情報
■権利帰属■
43条 納入物の所有権 納入物の所有権は、個別契約に定める時期をもって、ユーザへ移転
44条★ 納入物の特許権 特許権、他知的財産権は、発明等を行った者が属する当事者に帰属。
共同で行った発明等から生じた特許権等は共有。
45条★ 納入物の著作権 A案: 全てをベンダに帰属
B案: 汎用可能なプログラム等をベンダ、それ以外をユーザに帰属
C案: 汎用可能なプログラム等をベンダ、それ以外を共有
46条★ ベンダの納入物再利用 秘密情報扱いに反しない範囲で、
ベンダが著作権保有するSWや他納入物を利用できる。
■保証や責任■
47条★ 知的財産権侵害 納入物が、著作権特許権を侵害した場合のベンダ責任について規定
48条★ 三者SWの利用 技術的な要請等から第三者SWが広く利用されている。
しかし、ベンダが第三者SWの契約不適合や権利侵害の把握は困難な為
49条★ FOSSの利用
50条★ セキュリティ セキュリティ対策の機能、管理体制及び費用負担等は、別途、定める。
「政府機関の情報セキュリティ対策のための統一基準」や
「SW開発における情報セキュリティ対策実施規程(雛形)」を参照
■一般条項■
51条 権利義務譲渡の禁止 事前の同意なく、本契約の地位を第三者へ承継や権利義務譲渡できない
52条 解除 重大な過失や背信行為があった場合、本契約や個別契約を解除できる
53条 損害賠償 検収完了や業務終了から○年経過後はできない。
損害賠償累計総額は、帰責事由となった個別契約に定める金額を限度。
(ただし、賠償義務者の故意や重大過失に基づく場合には適用しない)
54条 輸出関連法令の遵守 納入物を輸出する場合、外国貿易法等を遵守し、所定の手続をとる。
55条★ 和解による紛争解決 法的救済手段の前に、当事者間でまず解決に尽力する。
当事者間で解決できない場合、仲裁/訴訟の前に
ADR(裁判外紛争解決手続)による解決を図る
56条 合意管轄 訴訟が生じた場合、○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄とする
57条 協 議 本契約や個別契約に定めのない事項や疑義が生じた事項は、
信義誠実の原則に従い協議し、円満に解決を図る。

情報システム保守運用委託基本モデル契約書

タイトル 内容
■総則■
1条 契約の目的
2条 適用範囲
3条 個別契約 作-業内容や請負/準委任,納期,委託料/支払法は個別契約で定める
4条 委託料・支払方法
5条 業務の開始日・期間
6条 再委託
■業務の実施■
7条 業務実施とユーザの協力 ユーザはベンダによる業務実施に協力する。
事業/業務変更による影響内容等は事前に協議する。
ベンダが業務をユーザの工場や事務所実施する必要がある場合、
ユーザはベンダの立入を認め、作業場所を提供する。
8条 業務従事者 開発モデル契約第11条(業務従事者)と同様
9条 会議体の開催 業務内容によっては定期協議会を開催する。
ベンダは議事録を○日以内に作成し、ユーザは○日以内に点検する
10条 障害発生時の対応 不具合等の障害時における緊急連絡体制等の取り決めが必要な場合
業務仕様書or別途書面で緊急連絡体制や必要な事項を取り決める
11条★ 一時停止 ベンダは以下の場合、業務を停止するでき、責任も負担しない。
・天災・事変等の非常事態による業務遂行不能
・通信回線、計算機等の保守や工事のやむを得ない事由がある
・ユーザが提供する設備が不具合等により停止 等
ベンダは停止事由の発生後直ちに時期/期間をユーザ通知する。
但し、緊急やむを得ない場合、事後相当期間内の通知もOK。
12条 本件業務の中止 ベンダはユーザに以下がある場合、解消までの間、業務中止できる。
・委託料支払いを遅滞し、催告しても解消されない
・本契約/個別契約の各条項に違背
・ユーザ責で、ベンダ業務に著しい支障を来たすorそのおそれがある
ベンダは事由発生後直ちに業務中止した旨をユーザへ通知する
13条★ ユーザによる監査 ユーザは業務履行状況を監査でき、ベンダは協力し必要な情報を提供。
但し、調査費用はユーザの負担。
14条 業務に関する責任 準委任: ベンダの善良な管理者の注意をもって実施される限り
    業務内容、結果等にベンダは責任を負わない。
請負型: 業務結果の誤りや業務仕様不一致の場合、ベンダは修正する。
誤り/不一致でユーザに生じた損害は、損害賠償する。
この責任期間は誤り/不一致の実施日から○年
■資料/情報の扱い■
15条 資料等の提供・返還 ユーザは業務に必要な資料開示や貸与等の提供を行う。
資料等が業務上不要となった場合、ベンダは遅滞なく返還等を行う
16条 資料等の管理 開発モデル契約第40条と同様
17条 蓄積情報の管理 業務遂行でベンダ内等にユーザの情報が蓄積/保管の場合、15条に従う
18条 秘密情報の扱い 開発モデル契約第41条と同様
19条 個人情報 開発モデル契約第42条と同様
■一般条項■
第20条 契約期間 契約有効期間は、締結日から○年間。
但し期間満了○ヵ月前までに意思表示がないと、更に○年間継続。
21条 契約内容の変更 開発モデル契約第33条 と同様
22条 権利義務譲渡の禁止 開発モデル契約第51条 と同様
23条 解  除  開発モデル契約第52条 と同様
24条 損害賠償 開発モデル契約第53条 と同様
25条 輸出関連法令の遵守 開発モデル契約第54条 と同様
26条 和解による紛争解決 開発モデル契約第55条 と同様
27条 仲裁・合意管轄 開発モデル契約第56条 と同様
28条 協  議 開発モデル契約第57条 と同様

保守・運用業務委託 個別契約書(サンプル)

タイトル 内容
■個別契約書■
1 業務名
2 契約形態 請負 or 準委任
3 業務内容 別紙業務仕様書に記載の通り
4 業務対象の範囲
5 ユーザ/ベンダ役割分担
6 開始日・実施期間 保守運用モデル契約 第20条 と同様
7 委託料 月額○百万円
8 支払条件
9 資料等、要な事項 別紙業務仕様書に記載の通り
10 特記事項
■別紙:業務仕様書■
1 業務の実施
2 業務の対象
3 業務の前提条件 ユーザ/ベンダの共同で実施されるもので、次項の役割分担に従う。
相手方の分担作業の実施にも誠意をもって協力する
4 実施体制 業務履行の連絡、確認を行う窓口責任者や、他の実施体制を定める。
相手からの要請や指示の受理、相手への依頼等は窓口責任者を通じて
5★ 業務の内容 以下を○曜~○曜の○時~○時に行う。
(1)業務実施状況管理
・案件管理・インシデント管理・問題管理・変更管理・リソース管理
・構成管理・定例報告
(2)業務アプリ本番処理検証
(3)業務アプリンの改良
保守における修正範囲は規定しておく必要があり
(4)業務臨時処理  
(5)トラブル対応 
(6)質問対応
(7)業務アプリの予防保守
(8)システム/運用改善提案
6★ サービスレベル 本件業務内容に加え、以下を達成できるように務める
・インシデント管理レスポンス・質問一次回答時間・改良納期
上記を達成できなかった場合、可能な範囲で改善努力する
7 定期協議会
8 ユーザの協力義務
9 受託条件の変更 変更希望の場合、書面で通知し、協議後、変更する
10 著作権の帰属
12 権利侵害 三者から知的財産権を侵害する訴えがあり、
ユーザがベンダへ要請する場合、ベンダが対応する